築古アパート再生マニュアル1/7 ープロジェクトの全体像ー
2017年末。
急逝した母から、都内にある木造アパートを相続しました。
元は、自ら製造業を営んでいた祖父が、高度成長期の頃に購入した土地・建物です。
こちらのアパート、相続した当時は稼働率が50%前後と空室が目立ち、遠からず朽ち果てていく姿を想像させる惨状でした。
しかし、再生に向けて必要と思われる打ち手を積み重ねた結果として、2019年3月現在では、「満室稼働」への見通しが立つに至りました。
そこで、これから7回ほどのシリーズでは、過去1年の取り組みを振り返ることで、築古アパートを満室経営するために必要なポイントを網羅してみたいと思います。
近年では、「戦後の人口増に応じて供給された賃貸住宅」の存在が、空き家と並ぶ社会問題と見なされるようになりました。
そうした状況を踏まえて、目指せ!築古アパート再生のマニュアル、の心意気で書いていきます。
第1弾となる今回は、再生プロジェクトの全体像です。
相続した物件の基本情報
- 所在地:東京都23区城南エリアの外れ(最寄りは東急沿線の各駅停車駅、徒歩10分以内)
- 土地面積:約300㎡(約100坪)
- 建物面積:約300㎡(約100坪)
- 用途地域:第1種低層住居専用地域(建ぺい率50% / 容積率100%)
- 用途:アパート(共同住宅)
- 構造:木造2階建(+亜鉛メッキ鋼板葺)
- 築年月日 / 築年数:1966(昭和41)年 / 築52年
- 戸数:12戸(相続時は13戸)
- 客付け:地場の小さな仲介さんなど数社にお任せ状態(一般媒介)
- 借入:ゼロ
※容積率が(ほんの少し)建ぺい率をオーバーしている「既存不適格」物件
当時の状況
入居率は50%ほどで、借り手は60歳前後の男性が中心、入居期間の平均は10年を超えていました。
空室となっていた各部屋の基本設備は、和式トイレ / 後付けされたシャワーブース / 和室から転換したフローリング敷の居室、といった具合です。
「各時代で入居者ニーズの高いポイントだけ、その場しのぎで修繕を繰り返してきた」印象が否めませんでした。
また、外観や共有部に至っては、過去数十年に渡って手入れがなされてこなかったのでは?と思わされる有様。
地面は苔(こけ)で溢れ、鉄でできた階段は錆だらけ、あちこち裂け目の入った外壁はくたびれ果て、庭はさながらジャングルの様相を呈していました。
取り組んだこと
改めて振り返ってみると、再生につながるポイントが5つ見えてきました。
- 市場調査と競合分析→勝てるコンセプト作り
- パートナー選定:管理会社さん / 工務店(職人)さん
- 外観 / 共有部に対するテコ入れ:清掃 / ±0を目的とした修繕 / +αの価値提案
- 空室に対するテコ入れ:清掃 / ±0を目的とした修繕 / +αの価値提案
- 既存入居者さん達の満足度向上:関係づくり / 長期入居に対する還元
それぞれを独立して順番に行っていったというよりも、実際には同時並行で少しずつ掘り下げていったイメージです。
各ポイントの詳細は、第2弾以降で改めて書き綴っていきます。
かかったコスト
「で、結局いくらかかったか?」、ざっくりと次の通りです。
後者の内訳は、故障や老朽化した設備の原状回復に約70万円、客付けに有効と思われる施策に約150万円、といった具合です。
もし、次に挙げる2本柱がない状態で取り組んでいたならば、少なく見積もっても倍の500万円は、費用がかかったはずです。
柱の1つは、「コンセプト」に沿った打ち手を施したことでコスト削減が成功したことです。
もう1つは、再生の初期段階で「手を動かし、汗をかけることは自分たちでやる。無理なことはプロにお願いする」との方針を立てられたことです。
2019年3月現在の状況
年明け以降、一気に反響が増え、現在では12戸中10戸が稼働するまでになりました。
残る2戸についても、2階手前にある好条件のお部屋(うち1戸は修繕中のファミリータイプ)のため、特に自信を持って提供でき、入居を見込んでいます。
なお、相続した当時は「物置き」状態だった103号室は、管理会社さんの提案を取り入れて、共用洗濯機を設置したスペースとして生まれ変わりました。
今回のまとめと教訓
再生マニュアルの第1弾として、プロジェクトの全体像をまとめてきました。
そこからは、次のような教訓が見えてきます。
- まず大切なのはコンセプト、競合物件と差別化できれば結果としてコストは下げられる
- 生命線は、自分たちでやることプロに任せることの線引き
第2弾となる次回からは、再生に向けて「取り組んだこと」に挙げた各ポイントについて、詳しく見ていきます。